ブッダの獅子吼 原始仏典・法華経の仏教入門
- 著者:北川 達也
- 出版:コボル
- 発行:2020年12月1日
- 価格:1,500円+税
- 頁数:288ページ
- 評者:西野 良子
- 編集:スピりんく 編集部
スピリチュアルブログ版ダイジェスト
本書は、神職でもある著者の北川達也氏が、ブッダの教えを分かりやすくまとめた1冊です。
<<著者「北川達也」氏について>>
著者の北川達也氏は、ソフトウェア会社の経営者でありながら、神職としての最高階位「明階」でもあります。仏教に関しても、仏教思想研究家の植木雅俊氏に師事し、また、公益財団法人中村元東方研究所・東方学院の研究会員となり、原始仏教を学んでいます。
本書は、そんな著者がブッダの教えである仏教の入門書を記したものです。
<<原始仏典の教えに触れる>>
本書では、日本の伝統に根差して広まっていると思われる日本仏教と原始仏教を区別するため、原始仏典を中心に据えた仏教を「仏法」としています。仏法とは、ブッダの説く「人の行いを支えるもの(法)」のことです。
しかし、仏法には、現代の日本人には理解しがたいものや、実践が無理なのではと思われるものも存在します。そこで著者の北川氏が、現代の日本人の生活の中でも実践しやすい教えを30項目取り上げ、更に著者の見解を混じえて解説しています。
これにより、とっつきにくさがなくなり、仏教に触れるのが初めての人にも分かりやすく、ずっと教科書のように手元に置いて活用できる入門書となっています。
<<苦しみを消す八正道>>
ブッダは数ある教えの中でも、八正道が最も優れた道であると説きました。
八正道とは、
・正見
・正思
・正語
・正業
・正命
・正精進
・正念
・正定
の八つの正しい道のことです。
言葉が示す通り、正しい見方、正しい考え、正しい言葉、正しい行い、正しい生活、正しい努力、正しい気づき、正しい精神統一を指し、これらこそが「苦しみの消滅へと至る道」であると説きました。
これは渇愛をコントロールする実践方法でもあり、また、中道の教えを道理に当てはめたものでもあります。
<<ブッダの説く「善行」とは>>
ブッダが生涯を通して大切にしていた「善行」の意味するところとは、「人を大切にする行い」です。
これを分類したものが「三業」であり、「身口意」のことです。
身=からだ、口=ことば、意=こころです。
これにより人を大切にするということは、日常生活の中でいつでもできることです。
たとえばからだによる善行とは、笑顔で声をかけることや、相手を気遣う態度などで行うことができますし、ことばによる善行であれば、優しい言葉をかけたり、感謝の気持ちを伝えたりすることができます。
そしてこころによる善行であれば、相手が上手くいくよう、また喜びますようになどと相手の幸せを心の中で思うことです。
こうしたことができるようになると、善行は自然と体からにじみ出てくるようになって、その人の雰囲気となります。
ブッダの教えはこのように、日常でできる行いを通して、真の自己に目覚める(悟る)ことを説いています。
目次
- 第一の扉 ブッダ誕生前の時代背景を知る
- 第二の扉 ブッダの説く最も優れた道を知る
- 第三の扉 持戒して、ブッダの弟子となる
- 第四の扉 精神統一したブッダの禅定を知る
- 第五の扉 ブッダの悟りの智慧を理解する
- 第六の扉 ブッダのように、悟りを深化させる
- 第七の扉 ブッダの説く善行を実践する
- 第八の扉 迷信へのブッダの見解を理解する
- 第九の扉 ブッダの教えを発展させる
- 第十の扉 ブッダのように、法に目覚める
一言コメント
本書では、ブッダの30の教えを元に、著者が現代日本人の生活に照らし合わせ、日常の中で実践しやすいように解説を入れています。そのため、どのように生きることが目覚めに繋がるのかがより分かりやすく感じられ、変に身構えずに実践していこうという気持ちになれます。
注目の文章ピックアップ
・中道とは、「快楽の生活」と「苦行の生活」のどちらにも片寄ることなく、その両極端をさける道のことをいいます。この悟りは、苦・楽を味わったブッダだからこその説得力があります。
・ただし、むやみに他の動植物の命を奪うのはさけたほうがいいといえます。なぜなら、そのような行為は、最終的に人の命の軽視につながるからです。
・「一切の事物は我ならざるものである」と明らかな知慧をもって観るときに、ひとは苦しみから遠ざかり離れる。これこそ人が清らかになる道である。
・「一切の形成されたものは苦しみである」(一切皆苦)と明らかな知慧をもって観るときに、ひとは苦しみから遠ざかり離れる。
・「思い通りにならないこと<苦しみ>」も、「固定的な実体ではないこと<空>」なのです。もし、今が苦しくても、いつしか苦しみはなくなります。
・一念三千の教えから、私たちの一念にはブッダの世界(仏界)も内包されていることになります。このように、一念三千の教えは圧倒的な平等思想を説いているのです。
・しかし、一念三千の教えから考えると、心を形づくる一念には全ての世界が内包されているので、心の住む世界を特定することはできないといえます。なおかつ、全ての世界が含まれるので、心の高低差もなく、平等なのです。
・ブッダの遺言です。「怠らないように、善行を積みなさい」
・ちなみに、仏法では天命や宿命、運命などの考え方はありません。