ストレスと戦う日々にやすらぎを取り戻す 怒る技法
- 著者:草薙 龍瞬
- 出版:株式会社マガジンハウス
- 発行:2023年3月20日
- 価格:1300円+税
- 頁数:238ページ
- 評者:宮村 凌
- 編集:スピりんく 編集部
スピリチュアルブログ版ダイジェスト
本書は、インドで社会改善NGOや幼稚園・小学校の運営、日本では「人の幸福と社会の改善に役立つ合理的な方法として仏教」を伝え、多くの書籍も執筆している草薙龍瞬氏が、「正しく怒る方法」を教えてくれる著書です。
本書を読むことで、怒りやイライラの原因も分かりますし、怒る技法さえ把握していれば「怒るべきところは怒っていい」ということも理解できます。
<<怒りの原因はどこにある?>>
通りすがりの迷惑な他人、仕事や家事・子育ての悩み、忘れられない過去のことや明日への不安もすべて、怒りなのです。
では、これら怒りの原因はどこにあるのでしょうか。
実は、怒りには2つの原因があります。
1つ目は「相手発の怒り」、2つ目は「自分初の怒り」です。
相手発の怒りには、次のようなものがあります。
相手がいきなり怒鳴ってきた
心無い言葉を浴びせられた
嫌がらせを受けた
SNSで見知らぬ人に絡まれた
親の過干渉や支配欲に振り回された
このような怒りは、相手に原因がある怒りです。
一方、自分発の怒りには、次のようなものがあります。
つい余計なことを自分から言って相手と喧嘩した
怒らなくていい場面でつい怒ってしまった
怒った出発点が自分側だと心当たりがある場合は、怒りの原因は自分にあります。
このように怒りの原因を分けることができるようになれば、「相手発の怒り」については「自分が悪いわけではない」と思えるようになり、怒りを半分に減らせるようになります。
これも、怒る技法の一つです。
<<“妄想ゾーン”のイライラは自分発の怒り>>
相手発の怒りは、自分は悪くないと思うことができます。
しかし、自分発の怒りはどうすればよいのでしょうか。
それは、イライラやストレスが“妄想ゾーン”から生まれていることに「気づく」ことです。
妄想ゾーンとは、「きっとこうなるだろう」「こうなったらいいな」などという都合のよい勝手な思い込みのことです。
思い込みと逆のことが起こると不快に思ってしまいます。それがイライラやストレスを生み出すのです。
たとえば都合のいい展開への期待や、他人への期待などは、過剰な自我の広がりである「われ思う」という妄想ゾーンが引き起こしています。
つまり、妄想ゾーンをリセットすれば、前に進めるということなのです。
<<「不動心」で無敵になれる!>>
妄想をせず、流されず、振り回されない自分になるためには、自身の心が見えてなければなりません。
心が見えていればどんな出来事にも動揺しない「不動心」という境地に達することができるでしょう。
ブッダは、心を見るための2つの技法を発見しました。
それが“サティ”と“ラベリング”です。
音や気配を察知することがサティ(気づき)の本質で、「ただ、ある」ことを知っているだけの状態です。
そして、真実を大ざっぱに言葉で確認するのがラベリングです。
この2つの技を磨くことで、心に余裕を持てるようになり、怒りに対して上手に対処できるようになります。
そして、怒りにも囚われなくなります。
目次
- はじめに
- ステージ1 怒ってOK“正しく怒れる人”をめざせ
- ステージ2 まずは自分から怒りを増やさない
- ステージ3 イライラの正体に気づく
- ステージ4 何事にも動じないタフな心を作る
- ステージ5 他人の「圧」に毅然と向き合う
- ステージ6 相手の“本質”を見極める
- ステージ7 理不尽な世の中に立ち向かう
- ステージ8 「褒められたい私」を卒業する
- ステージ9 人生の“古い怒り”を手放す
- 最終ステージ この世界を“強く”生き抜く
- “怒る技法”のまとめ
- あとがきに代えて
一言コメント
本書を読むと、怒りやイライラを感じてしまう理由が理解できます。そして、その対処方法が具体的に示されているので納得できるのです。「怒ってもいいんだ」と思えることや、「怒るべき時がある」ことを知ること、そして「どうやって怒ればいいのか」が理解できることも、本書の大きな特徴の一つでしょう。
注目の文章ピックアップ
・通りすがりの迷惑な他人も、仕事・家事・子育ての悩みも、忘れられない過去のことも、明日への不安や生きづらさも、全部怒りです。
・ブッダとは、心の動きを見極めて、一切の苦しみに打ち勝った最強の人です。
・どんな怒りも、技を使えば、解消できます。
・この怒りの原因は別にある。自分は悪くない-そうはっきり思えたら、怒りを半分に減らせます。
・結局は「怒るほどの価値があるのか」という話です。
・妄想ゾーンとは、自分に都合のいい妄想です。
・すべての妄想ゾーンは、「われ思う」という妄想から始まります。
・イラッとしたら、妄想ゾーンと気づく
・どんな出来事にも動揺せず、流されず、厄介な相手をも冷静に見据えて、心を崩さない-こうした境地を、仏教では「不動心」と表現します。
・「心を見る技術」としてブッダが発見したのが、“サティ”という手法です。
・細かく「ある」と察知することが、サティで、他方、大ざっぱに言葉で確認することが、ラベリングです。
・だから、人生を変えたい人は、考え方と、語る言葉と、実際の行動を変えていけばいいのです。
・他人の言葉は「しょせん、音」