なぜ、成功する人は神棚とご先祖様を拝むのか?
- 著者:窪寺 伸治
- 出版:あさ出版
- 発行:2022年11月30日
- 価格:1500円+税
- 頁数:200ページ
- 評者:熱川 宏茂
- 編集:スピりんく 編集部
スピリチュアルブログ版ダイジェスト
著者の窪寺伸治氏は、神棚マイスターです。東京神棚神具事業協同組合の理事長という立場でもあります。
かつて、日本の家庭に必ずと言っていいほど祀られていた神棚や仏壇ですが、文化や価値観の西洋化に伴い、これらの風習は一般的ではなくなってしまいました。
本書は、「神棚マイスター」である著者独自の視点で、神棚や仏壇が本来持つ意味を再認識し、且つ、「祀る」という行為の正式なやり方や意味、そして、現代社会において実際どのように実践していくのか?を詳細に綴った1冊となっています。
日本人は、よく宗教に寛容であるとされます。初詣は神社、結婚式はチャペル、そして、お葬式では主に仏教寺院の僧侶が読経を行い、死者を弔うというように、TPOに応じて宗教すらも使い分けているのです。
過去においては、明治政府によって廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)が執り行われるまで、各地では当たり前のように神社と寺院が同じ敷地内にありました。
しかし、実際のところ、神社にいる神様はその場所、地域を守護しており、人々は神様にその土地に住まわせていただいているという考えから、神様たちに日々の健康や安全を祈り、感謝することが当たり前のようになされていました。
一方、各家庭に供えられていた仏壇には、命をつないでくれたご先祖様に対して、現在まで生を繋いでいただいていることへの感謝と、今後の守護をお願いしていました。そして、仏間は、感謝や祈りの心で幸せを願うことを通して、ご先祖様と交流する場であったと言えます。
このように、神様やご先祖様をお祀りする風習はどの家庭にもあり、日本人の精神性の基礎となっていたと、氏は訴えます。
さらにそこから見えてくるのは、日本人が本来持つ、「目に見えるものばかりでなく、見えないものに対しても畏れを抱き、感謝する心」を誰もが持ち、脈々と継承してきたという事実です。
これらを踏まえて、本書では、具体的な日々のお参りの仕方、お参りの際に心に浮かべる言葉なども語られています。家庭での作法のみならず、会社への神棚の設置方法や実際に神社や寺院に参拝したときの作法までもが述べられています。
例えば、自宅に神棚を祀りたいと考えている人がつい躊躇してしまう原因として、榊や水を毎日取り換え、お供えを続けることがあげられます。
でも、人間だれしも、時に忘れてしまったり、時間が取れなかったりすることもあるでしょう。そういうとき、なにか大きな災いが降りかかるのではないかと不安がる方もいるかもしれません。
著者は、最初は自分のペースでかまわないと言います。大切なのは、習慣にすることと、感謝の気持ちです。
毎日自然に行える習慣になるまでは、例えば「月に2回お祀りする」、「毎週決まった曜日にお祀りする」といった自分のルールを決めて始めるのが良いそうです。
それと同時に、誕生日や記念日などの特別な日には、野菜や果物などを供えて、自分が生かされていることに対する感謝の気持ちを伝えましょう。
最終的には毎日お祀りすることが目標です。手間がかかることを毎日行うことが、自分の心を神様、ご先祖様に向けることにつながっていくといいます。
神棚はお守りではなく、水をかえたり拝んだりすることで、神様とコミュニケーションをとる場所なのです。
かつての日本人が有していたどんなものにも神が宿るとして崇め、奉った八百万の神々たち。そして、各々が自らのルーツであるご先祖様に対し思いを馳せることができる、そんな1冊です。
目次
- はじめに
- 第一部 ご先祖様を拝む
- 第二部 神棚と神社で神様、ご先祖様を拝む
- 第三部 木と神様とご先祖様
- おわりに
一言コメント
日々、売上、利益といったワードが飛び交う組織では実際「長いこと墓参りなんか行ってない」などと言う同僚たちに神様やご先祖について語るのはなかなか大変ですが、彼らも新年早々には商売の神様へのお参りは欠かしません。そんな彼らにもこの本を読んでもらって目に見えぬものへの畏敬の念を持って欲しいと思いました。
注目の文章ピックアップ
・私たちと先祖の関係を1本の木に例えてみましょう。私たちは、木の幹であり、先祖は大地にはる根であり、枝葉は子孫です。根は地中にあるため、私たちには見えません。見えないためにそれがどうなっているのか分からないばかりか、知ろうともしていません。
・どうしても気になるのは枝葉、子孫のことです。もちろん、枝葉は、剪定などの心配りが必要です。
しかし、この木を木ならしめているのは実は根元なのです。根元に、水や肥料が行き渡らなければ、根ははらず伸長させられないばかりか、木そのものが倒れることもあるのです。根も葉も枝葉も木の現れの姿です。木の生命の中では一体なのです。ご先祖様も私たちも子孫も、一つの生命の現れなのです。
・感謝の心もなく、ただ自分の願望の成就のみに血道をあげて、神社まわり、寺院まわりをする、外見上は「信心深い人」よりも「祈らなくても、誠があれば、神に通じる」といった、生き方の中に正直誠実、謙虚をしている人の方が、神様に通じているのではないでしょうか?
・日本人は世界中で最も霊性の高い民族の一つですが、その霊性とは知性的であることではなく、行動的、生活的に表れている霊性なのです。日本人は、西洋人のように知性的哲学、知性的霊性を持つのではなく、行動による哲学、行動的霊性を持つのです。