さとりをひらいた犬
- 著者:刀根健
- 出版:SBクリエイティブ株式会社
- 発行:2021年12月28日
- 価格:1500円+税
- 頁数:358ページ
- 評者:宮村 凌
- 編集:スピりんく 編集部
スピリチュアルブログ版ダイジェスト
本書は、産業カウンセラーでありTAマスターコンサルタントの刀根健氏が、ステージ4の癌を克服する壮絶な闘いの中での神秘体験を通して得た気づきから執筆された著書です。恐怖や不安の本質などに触れながら、本当の自分とは何か、本当の自由とは何なのかを、猟犬の物語を軸にして私たちに解いてくれます。
<<本当の自分とは何なのか>>
「本当の自分とは何なのか」。猟犬のジョンは、飼い主の人間と狩りをすることが当たり前の日常の中で、その問いを深く考え始めます。狩りという仕事をして、決まった食べ物(報酬)にありつける毎日。そんな中、獲物として出会ったダルシャから言われたのは「お前は人間に『飼われている』」という言葉。そして、「俺たちの本質は『自由』だ」という言葉。これにより、ジョンは「本当の自分とは何か」を考えはじめます。そして、ダルシャから言われた通り「魂」に問いかけると答えが帰ってきたのです。「今の自分は自由じゃない。本当の自分じゃない。」「本当は自由になりたい。自由なぼくが本当の自分だ」と気づくのです。
<<“恐怖”と“不安”は自らが創り出す幻想>>
本当の自由と本当の自分になるために、ジョンは一歩踏み出しました。しかし、向かう場所は『赤い魔獣』がいるといわれるベレン山。ベレン山に行くべきかどうかを迷うジョンですが、そこにダルシャの声が聞こえます。「やるかやらないかはお前さんの自由だ」。そして、迷っている原因は「いま、“恐怖”と“不安”に囚われている」からだと言うのです。さらに「“恐怖”と“不安”は逃げれば逃げるほど追ってくる。いずれそれに捕まると“ほんとうじゃない自分”が、“ほんとうの自分”に入れ替わってしまう」と言われ絶句しました。翌朝、ジョンは恐怖と不安に勇気で向き合い、ベレン山を目指します。ベレン山にいたのは大きな赤い熊のゾバックです。ゾバックこそが『赤い魔獣』でした。ジョンは恐怖に耐えながら踏ん張り対峙します。するとゾバックが話しかけてきました。会話の中でゾバックは「お前が感じた恐怖は、お前自身だ」「お前の内面が鏡となって現れた」と言います。それでジョンは気づきました。自分自身の恐怖に恐怖したこと、つまり、恐怖は自分自身が創り出していたのです。そしてゾバックは「目の前に展開する状況で不安や恐怖を感じた時、それは現実ではなく、己の心が創り出した幻想だ」と言ったのです。
<<幻想に勝利するために必要なのは“幻想を見抜く”こと>>
ゾバックは、ほんとうの自由を得るために必要なことについても教えます。「ほんとうの自由を得たいのであれば、幻想を見抜くことだ。幻想に捕まり、幻想の奴隷になってはいけない」と。ジョンは、恐怖や不安は自分が作り出した幻想であり、まずは恐怖や不安を乗り越えること、そのためには、それが幻想だと見抜くことが大切だと気づきました。
<<ほんとうの自由とは“自分”からの自由>>
それからジョンは、さまざまな出会いと別れを繰り返しながら、勇気やエゴ、魂について深く理解していきます。そして、ほんとうの自由とは、外側の何かから自由になることではなく、自分自身の身体や、恐怖や不安を含めたさまざまなエゴの声などの“自分”から自由になることだということに、ジョンは気づくのです。
目次
- 第1章 旅立ち ―――― 魂の声を聴け
- 第2章 北の谷 ―――― 身体・エゴ・魂
- 第3章 ベレン山 ―――― 恐れを見抜く
- 第4章 アマナ平原 ―――― エゴの牢獄
- 第5章 レグードゥの森 ―――― 目指す者たち
- 第6章 女神シャーレーン ―――― ゆるしと癒やし
- 第7章 最後の闘い ―――― すべてはひとつ
一言コメント
物語の中で、ジョンは旅を通したさまざまな出会いから、ほんとうの自分とほんとうの自由に必要なことを学びます。それは、普段私たちが感じる恐怖や不安、悩みに重なるものです。そして、ジョンの旅はそれらの本質を教えてくれます。今、不安や恐怖で一歩進めない方、仕事に追われず自由に生きたいと思っている方におすすめできる一冊です。
注目の文章ピックアップ
・「いまの自分は“ほんとうの自分”なのか?“私は、ほんとうの私を生きている!”と言うことができるか?」
・「そうだ、逃げれば逃げるほど“恐怖”と“不安”は追ってくる。いずれ、それに捕まって、そのほんとうじゃない自分が、ほんとうの自分に入れ替わってしまうんだ」
・「そうだ。お前が感じた恐怖は、お前自身なのだ。お前の内面が鏡となって現れたのだ」
・「それは、“勇気”だ」
・「目の前に展開する状況で不安や恐怖を感じたとき、思い出すがよい。それは現実ではなく、己の心が創り出した幻想だということを。そして、ほんとうの自由を得たいのであれば、幻想を見抜くことだ。決して幻想に捕まり、幻想の奴隷になってはならない」
・「真実というものなど、どこにもありはせん。よいか、この世界に真実などというものはない。おんしがおんしの世界を創っている、おんしがおんしの頭の中に勝手に真実を創っている。これが真理じゃ」
・(違います。全ての攻撃は、愛してほしいという心の声なのです。私には、あなたが助けを呼ぶ子犬にしか見えません。あなたは、自分でそれがわからないのですか?)
・「抵抗せず、判断せず、執着せず、ただひたすら、ありのまま、自らの心を観照し続けなさい」
・「はい、ほんとうの自由とは、外側の何かから自由になることではありませんでした。身体やエゴの声といった“自分”からの自由…これがほんとうの自由です」