日本人の魂の香り
田尻 成美(2023/11/16)

世界に誇るヤマト民族の叡智 日本人の魂の香り

  • 著者:田尻 成美
  • 出版:ビジネス社
  • 発行:2023年11月16日
  • 価格:1,400円+税
  • 頁数:200ページ
  • 評者:米田 嶺子
  • 編集:スピりんく 編集部

スピリチュアルブログ版ダイジェスト

<<著者について>>
本書著者である田尻成美さんは、早稲田大学第一文学部卒業後、東京大学大学院総合文化研究科博士課程を修了、ご専門は比較文学と修辞学であり、現在はTKKホールディングス(株)TKKエンジニアリング(株)TKKエンターテインメント(株)の取締役でもあります。私生活では三男三女としてのお母さんでもあり、本書以外では翻訳や、絵本の出版、ユリイカなどにも寄稿なさっております。

<<本書の特徴と読みどころポイント>>
私達日本人にとって暮らしの基礎にもなっている日本文化──。
古くから日本人は物事に寛容であり、どんな他文化も受け入れようとして成長した結果、現在の日本があります。日本人としての美学を説いた本は数ありますが、生活や文化・思想をここまで詳細に調べ、裏付けた書籍があっただろうかと感服させられる一冊となっております。

この、他文化を取り入れる姿勢に関し、本書第三章内・日本人が生み出した空間と所作にて
“よく「日本人は何でも無節操に受け入れる」とか「加工は得意だが、オリジナルがない」「偉大なリーダーがいない」と、まるでそれが日本人の欠点であるかのように言われます。しかし、実はこれこそが「中空構造」の「中空構造」たる素晴らしい特徴なのです。”
と述べられています。

和(輪)や共生を大切に考える日本人は、自分が現在生きている事や、他者や物を大切にする事を肌で知っています。何でも良かれとして受け入れてきたわけではなく、自分ばかりが出しゃばらない奥ゆかしさで、物事の良い面に光を当てて生きる事で戦わない事を選ぶ潔さを貫いた国でもあります。そうした民族の持つDNAは現在でも尚、継承され続けており、基礎にある素晴らしさを忘れないで生きて行こう、を与えてくれるのが本書の特徴でもあります。

加えて、本書に関して特筆すべきは著者の専門が比較文学と修辞学だった事もあり、日本語から紐解く
”日本人の見せる親子や他者との関係性の築き方、並びに他国と比べた場合の日本語での表現方法の比較”は脳科学にも触れ、日本文化や日本人の持つ気質に寄り添い、今日にも及ぶ言語があることを学ばせてくれます。品という物は教養であり、勉強ができる・できないで賢さが決まるわけではなく、持ち前の気質や特性を生かした関係性や文化の中で磨かれる事の裏付けが他の文化書籍には見られない本書の最大の強みとなっています。

現在の親子間での教育論に触れた項目では、そういうものであるとせず、こうしていけば良いとの解決策の提示があり、また社会で働く人に対してのデザインと美学に関しての項目ではジャパニーズスタイルとプロダクトの発展と確立、それらを武器として活用すればうまくいく方法までもを伝授、文化や品・美学から様々な歴史までが本書のこの一冊に掲載されています。

一章から五章まで、普段私達が使う言葉から、食べる物、行事や和の建造物、立ち方や座り方で体を整える事、日本人としての品や美学、なぜ日本人はこのように考えるのか・感じるのかまでもをきちんとした裏付けを基に解説、余す事なく網羅された一冊に仕上がっています。日本人としてのものづくりや、子育て論、芸術や美術と多岐に渡って学びのある一冊となっており、性別や年齢問わず読み手の受け入れやすい文化本の名著です!

目次

      • はじめに
      • 1章 親と子
      • 2章 世界に誇る、日本の美意識
      • 3章 日本人が生み出した空間と所作
      • 4章 日本人だから感じられる「自然」の力
      • 5章 自と他――「敵」も味方に

一言コメント

以前に他国の方が海藻を口にしないのは消化するバクテリアを体に飼わないから、という話を伺った事があります。本書で、日本語の表現にオノマトペが多いのは「自然音を言語脳である左脳で聞くから」とあった部分がとても勉強になりました。体の作りが違えば考え方や受け取り方が変わってくるという部分で大納得です。

注目の文章ピックアップ

・母子一体感が一番必要な三歳前後までの赤ちゃんは、情緒が安定して心身の発育も良いそうです。おんぶによって頭部が適度に揺らされることで、脳の発達も促されるといいます。

・小脳は運動だけでなく、考え方や情動の型の形成にも関わっており、小さい時に良い生き方や正しい考え方の型を脳に小脳に入れておけば、その後の人生でも腹が坐ってぶれることのない生き方ができるのです。

・このように、理不尽だとか、不合理だ、あるいはダサいと思われていた日本の昔からの習慣が、最先端の脳科学の眼で見ると、意外にも優れた合理性と功利性に満ちていることが多くあります。

(英語で親子にあたる言葉は見当たらないとした言及部より)
・私たちは対になっている物を、紙の裏表のように「同じものの二つの側面」と考えますが、表「と」裏のように二つを分けて考える文化もあります。西洋的な思考では分けて考えますね。

・日本人が分かちがたいものとしている「親子」という存在は、脳レベルでもひとつながりの現象として表れていることがわかります。

·興味深いことに、「親子」のような関係の存在に「対生成」とか「共依存」という概念で、西洋の学問がアプローチとし始めたのは、なんと二十世紀に入ってからでした。

(日本の引きの美学の言及部より)
・一番大切なものは目に見えるものの奥に、ひっそりとつつましく鎮まっている──暗黙の裡に私たちはそんなふうに感じてはいないでしょうか?

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日本人の魂の香り 田尻成美 ビジネス社

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