禅「心の大そうじ」
枡野 俊明(2011/10/10)

 

禅「心の大そうじ」

  • 著者:枡野 俊明
  • 出版:株式会社 三笠書房
  • 発行:2011年10月10日
  • 価格:571円+税
  • 頁数:221ページ
  • 評者:白石 寿里
  • 編集:スピりんく 編集部

スピリチュアルブログ版ダイジェスト

見開き2ページで1つの項目が完結する読みやすい作りの本です。そこには様々な禅の教えである禅語が散りばめられています。飾らず、気張らず、ただ「ありのまま」シンプルに生きることの素晴らしさを教えてくれています。

シンプルに生きると聞くと、そう難しくないように感じてしまいます。しかし、現代を生きる私たちは、例えば人に親切にする際でも、そうすることで「自分が相手に優しい人だと思われる」ことを知らず期待してしまうのです。情報に溢れた便利な時代を生きる私たちは、利益を求める傾向が強くなってしまったのです。

他者からの評価ばかりに重点を置いた生き方だから、評価されないことに辛くなってしまったり、苦しくなってしまったりしてしまうのです。評価されたいと無意識に飾り立て重くなった心には、大そうじが必要です。着飾ったものを削ぎ落としありのままシンプルに生きることで、今までは自分の評価にばかりに重点を置いてしまう生き方から、周りへ目を向けられる、周りを思いやれる生き方に変わって行くのだと思います。

それが心が軽くなる、気持ちが明るくなる生き方へと繋がって行くのです。その方法は精神修行のようなニュアンスで書かれていながら、それらすべてが特別なにか修行をする訳ではなく、日々の暮らしの中で視点や考え方を変えるだけで実践出来るのです。例えば炊事。食事の準備という、生きるために必要な行為の中でも禅の精神を活かすことができます。「真心を馳走す」つまり自分のありったけを料理に込め、その真心を相手に振る舞うという気持ちで食事の準備に望むだけで、日々義務のようにこなしているそれが、自らの修行となるということなのです。

その他、玄関を綺麗に掃き清めることや、人とあったら挨拶を交わすなど、簡単に取り組めることがたくさん紹介されているのです。また自分の身近なものに対する心の持ち方にしても、この程度なら簡単に換えが利くというような心で疎かに扱ってしまうことはあると思います。疎かに扱うということは、自分の命を注ぎ込んでいないということの現れで、そんな生き方では生きている甲斐がないとも教えてくれています。使い捨ての便利な時代を生きるうちに、ものを大切に扱う、そこに命を注ぎ込むという考え方は薄れて来ているように思います。90以上の項目で紹介されていることの一つ一つは小さなことです。そんな小さなことの中から、今の自分が取り組みやすいことを実践していくことで、禅の生き方に近づいて行けるのではないでしょうか。今まで気づかなかった心の錘に気づける本ですので、多くの方に手にして頂きたい一冊です。

目次

  • はじめに
  • 1.[上手に「気持ちを整理する」禅のヒント]あなたの「心の荷物」をスッとおろすコツ
  • 2.[毎日を「丁寧に生きる」禅のヒント]挨拶、食事、整頓……シンプル生活のすすめ
  • 3.[「人間関係がうまくいく」禅のヒント]すべての出会いは「かけがえのないもの」
  • 4.[「仕事の悩みが晴れる」禅のヒント]「頑張る」よりも、「心の持ち方」を変える
  • 5.[「一生の支えになる」禅のヒント]こう考えれば、人生は決して難しくない

一言コメント

生きていると心が疲れる時、心が乾いてしまう時があります。そんな時に開きたくなるのがこの本です。パラパラとページをたどると、きっと自分の欲しい言葉に巡り会えます。禅語というのは心に響き、心に沁み、そしてその中には現代人の生きるヒントが沢山詰まっているのです。

注目の文章ピックアップ

・今この瞬間、自分が生きている。「それだけですごいことじゃないか!」と思える。その”すごい自分”を真剣に生きたらいい。禅の心に沿った肩の力の抜けた生き方とは、きっとそんなものだと思うのです。

・やさしくなろうとか、強さを見せようとか、小手先で自分を飾り立ててもだめなのです。誠心誠意、全力を尽くすことだけにつとめたら、おのずとほどよい”人間としての味わい”が醸し出され、周囲にも伝わるでしょう。

・つつがなく一つのことを終えてなお、心配りを忘れないという姿勢が、お互いの心にあたたかい余韻を残す。

・生飯を供す仏教のしきたりは、自分一人では生きていけない、他の命あるものたちによって生かされている、というところからきています。だから、自分も他のものを生かさなければいけないわけです。まさしく「共生」ですが、これは仏教の根本的な考え方。誰かのためにそっと脇によけておく”生飯”の心を、持ち続けてください。

・言葉には人を傷つけることがある一方で、相手を癒やしたり、救ったり、励ましたりする力がある。その力を最大限に活かすのが愛語なのだと覚えておいてください。

・ふだんよく顔を合わせる人には「また会える」とタカを括っているところもあるでしょう。これでは相手への思いが疎かになり、人間関係は希薄になる一方です。

・自分が本当に輝ける場所は見つけるものではなく、つくり出していくものです。今いる場所の外よりも、今いる場所を見つめ直してみてください。

・視線を内に向け、心を照らす以外に、自分を変える方策はありません。その日一日の自分の行いを振り返ってみる。変化の糸口は、そんな所に見つかるものです。

・私たちの人格も、絶え間ない自分磨きの結果、より高いものに熟成されていきます。熟成速度はそれぞれ違っていても、歩みを止めなければ、皆”醍醐”に向かって生きることになるのです。

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禅「心の大そうじ」 枡野 俊明

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