仏にゃんのふわもこやさしい仏教の教え
- 著者:Jam 枡野俊明
- 出版:笠間書院
- 発行:2023年12月5日
- 価格:1,300円+税
- 頁数:168ページ
- 評者:米田 嶺子
- 編集:スピりんく 編集部
スピリチュアルブログ版ダイジェスト
<<著者について>>
成功を収めている人を見て“元々才能に恵まれているからあの人は出世したのだ”と多くの方が考えがちですが、そこにはご本人の努力と苦悩の日々が練り込まれています。ゲームグラフィックデザイナーであるJamさんもご本人のご苦労と日々の努力で才能を開花させたおひとりです。自身に才能やスキルが備わっていないのではないか、とこれからの方向性に悩まれていた時、熊本地震があり、自分の持っている物で誰かを笑顔にする事は出来ないか、と考えて発信されたのがSNSから火がついた『パフェねこ』でした。
著者のJamさん自身も元々何かに長けていると自身では感じた事のないおひとりでしたが、物事は何においても捉え方と考え方で乗り越えられるという事、そこには短大で学んだ心理学の授業のテーマが「般若心経と色即是空」であった事で学べた、仏教の教えが自分を支えてくれた!と思える部分が大きかったのでしょう。
本書は誰にでも受け入れられ易いようにゆるく可愛いキャラクターである”仏(ほと)にゃん”と共に、自身を救ってくれた仏教用語を現代人にあわせた解釈で教えてくれます。
更に本書では、曹洞宗・建功寺のご住職でもある枡野俊明さんを監修として迎えた豪華な顔ぶれとなっております。枡野さんはご住職である傍ら、多摩美術大学の名誉教授でもあり、庭園デザイナーとして芸術選奨文部大臣新人賞を初受賞・ドイツ連邦共和国功労勲章功労十字小綬章を受章された経歴をお持ちで、2006年の『ニューズウィーク』日本版では「世界が尊敬する日本人100人」に選出されたご住職でもあり、益々質の高い一冊となっております。
<<言葉と日本道徳の関係性>>
あまりに当たり前で見過ごされやすい部分ではありますが、仏教が根底に根付いており、それが道徳観念として浸透しているのが日本という国の文化そのものでもあります。私達が常日頃使っている日本語という言語には、実に多くの仏教用語が散りばめられています。その日本語を日常会話に使用している私達は、言葉を持つ事で自分の気持ちや心を伝える行為を毎日繰り返しています。
仏陀は言いました。『舌(言葉)というのは鋭いナイフのようなもので、血を流すことなく殺すものだ』と。物の伝え方や伝わり方で、誰かや何かを傷つけてしまったり、関係性が思ったように結べない時、行動ももちろん大きいですが、言葉上での意思の疎通や、互いに持ち合せている道徳観念がうまく機能していない時にも多く見られます。
本書の中では「因縁」という言葉が紹介されており、種と条件がどれかひとつでも欠ければ花は咲かない、と記してあります。どの言葉をどの状況で使うかで伝わり方は全く変わってくるものです。お互い様、のように様のつく言葉も仏教用語のひとつですが、自分も感じた事を遜色なく真心こめて伝えたいように、相手もそうであると他者との関係性に感謝し、よい言語やよい感情を持ち、自分で自分の居心地のよい場所を築くため、まずはご自身が普段使われる言葉を見直してみてはいかがでしょうか?
自分の気持ちを伝える為でもある言語が他者に寄り添う言語になる時、あなたをとりまく世界はきっと違うものとなりますよ!
<<仏教なんて難しそう!そう思うあなたにこそ読んで欲しい!>>
本書ではjamさんの可愛くゆるいふわふわとした柔らかいキャラクターの仏(ほと)にゃんが登場する漫画→説明→このように考えてみてはどうか?が見開きの1ページに詰まっており、その日の気分でどのページを開いても何かひとつの実りがあるように工夫されています。
映画キングスマンのタイトルを説明内で見かけたり、バンド名でもあるブラフマンが梵字一文字で表現されるものであったりと、難しいものは少し……と思われる世代にも、身近に感じられてスラスラと読める内容のものばかりです。
今日自分が使った言葉、これから使ってみたい言葉、あの人がくれた言葉の意味にはどんな思いがあったのか等、一日の終わりに調べてみるのも最適です。生きづらさを感じた時、是非お手に取って一度眺めてみて下さい。きっと心がほぐれる、そんな一冊です!
目次
- プロローグ
- はじめに
- 1章 人とのつながりを大切に
- 2章 自分の生き方を改める
- 3章 仕事の中にも仏教の心
- 4章 世の中を見つめ直す
- 5章 言葉に溢れる仏教の教え
- 6章 より深く仏教を知る
- おわりに Jam
- 猫が語る言葉は人生の良き「道しるべ」 枡野俊明
- column1~5
一言コメント
ゲームグラフィックデザイナーでもあるJamさんなので、是非この機会に仏教上での仏様同士の対戦バトル等のゲームを出されたらもっと仏教という物が身近になり、皆に教えが布教されるのではないかと感じました。金輪際という言葉が数値化されていたのも本書で初めて見たので大変ためになりました!
注目の文章ピックアップ
(監修に当たったご住職·枡野俊明さんが本書に寄せられたのお言葉)
・本書は、Jamさんが「仏にゃん」という猫のキャラクターを用いて、仏教用語を解りやすく、しかも、親しみが持てるように漫画を用いて解説をしてくれている。これは大変素晴らしい事である。
・何より仏教に対する敷居も低くすることができたのではないかと思っている。そのような意味からすれば、本書は若い世代にも手に取ってもらえるものだろう。私のような僧侶としては、本当に有難いことである。
・今の社会では、情報と共に多くの言葉が溢れている。言葉そのものが軽くなり、同時に、言葉の持つ本来の意味合いが薄れてきていると感じ残念に思っていた。このような中にあって、今一度、言葉の原点に触れ、しかもそれが仏教への正しい理解につながることになれば、大いに頼もしい事である。
(著者jamさんのお言葉)
・例えば、後ほど解説する「我慢」という言葉、今は耐え忍ぶ意味で使う事が多いけれど、本来は「我を張って慢心すること」で煩悩の一つです。「なんで?つらいのに煩悩とか酷い言われよう!」と思いましたが、よく考えると、誰にも頼らずに自分でなんとかできると思うのは慢心でもあります。「耐えることをやめた方が楽になるのでは?」と、本来の意味も知ることで、気持ちを楽に切り替えることができました。
・仏教語は仏様の教えの一部なので、結果として、意味を知ることで気持ちが楽になる言葉が多いのです。