ブッダの獅子吼
北川 達也(2020/12/1)

ブッダの獅子吼 原始仏典・法華経の仏教入門

  • 著者:北川達也
  • 出版:COBOL
  • 発行:2020年12月1日
  • 価格:1500円+税
  • 頁数:282ページ
  • 評者:鹿間 由紀
  • 編集:スピりんく 編集部

スピリチュアルブログ版ダイジェスト

本書は、仏教の開祖といわれるブッダの教えが解説された本です。

『ブッダの獅子吼』とは、「ブッダ、が自信を持って、ライオンが吠えるように教えを説いている」という故事から来ています。
「ブッダの肉声に近い仏典」といわれている『原始仏典』や、『法華経』などの教えが、現代の日本人の生活に生かせるように解説されています。

《ブッダが生まれた時代背景とブッダの探求》
紀元前12世紀頃「バラモン教」が成立、後の紀元前6〜5世紀頃に「輪廻からの解脱」が目標とされバラモン達は苦行に励んだそうです。

その頃、ブッダが釈迦族の王子として誕生します。
同時期に「六師外道」という自由思想家たちが現れ、いろいろな思想が入り乱れる中、人々は拠り所を無くしたそうです。
そのような時代背景の中、ブッダは思想の探求を始めました。

宮殿で「快楽の生活」を送っていましたが、外出する中で「生老病死」があることや修行者の姿を見て出家し「苦行の生活」を送ります。
そして、ブッダは35歳の時、「快楽の生活」と「苦行の生活」の両極端を避ける「中道」という〈悟り〉を得たそうです。

ブッダは「中道とは、八正道のこと」と最も優れた道と説きました。
八正道は「苦しみの消滅へと至る道」とのことです。

《悟りに至るブッダの「三学」》
本書では、八正道を、悟りに至るための道「三学」に当てはめて解説されています。
それは「持戒」・「禅定」・「智慧」です。
その一つ、「持戒」とは、八正道の正語・正業・正命を具体化した、ブッダの五つの戒め(五戒)を守ることをいいます。

正語は、偽りなどから離れた「正しい言葉」で話すことを心掛けること。

正業は、殺しや盗み、淫行をしないという「正しい行い」をすること。

正命は、邪な生活から離れた「正しい生活」をすることです。

例えば、正命ではブッダは「わざわいを起こすもととなる飲酒をさけなさい」と言います。
著者はこれについて、適量なら問題ではなく、飲酒の量をコントロールすることを勧めています。
そして「禅定」・「智慧」、また悟りを深化させたブッダの教えについて解説されています。ぜひ本書を手に取って、ブッダの教えの学びを深めてください。

《実践、発展、法の目覚めへ》
ここまでの中道や八正道の悟りの解説を基礎として、ブッダの「法」の実践について語られていきます。
仏法には、「善い行い〈業〉」には「善い報い」、「悪い業」には「悪い報い」がある「業報」があるそうです。

そして、善行を積み、その報いが結実したとき幸せになれるとのことです。
また、死後の世界など、迷信へのブッダの見解や、ブッダの教えを発展させ後世に成立した『法華経』などについても解説されています。

そして最後に、人生という時や「真の自己」について、法に目覚めるためのブッダの教えについて語られます。
ぜひ実際に本書を読み、ブッダの教えを人生に活かしてください。

目次

  • 始めに
  • 第一の扉 ブッダ誕生前の時代背景を知る
  • 第二の扉 ブッダの説く最も優れた道を知る
  • 第三の扉 持戒して、ブッダの弟子となる
  • 第四の扉 精神統一したブッダの禅定を知る
  • 第五の扉 ブッダの悟りの智慧を理解する
  • 第六の扉 ブッダのように、悟りを深化させる
  • 第七の扉 ブッダの説く善行を実践する
  • 第八の扉 迷信へのブッダの見解を理解する
  • 第九の扉 ブッダの教えを発展させる
  • 第十の扉 ブッダのように、法に目覚める
  • 結び

一言コメント

ブッダの教えに対して、「難解、厳しいもの」というイメージがありましたが、わかりやすい言葉で、現代の日本人に合った考え方で解説されていて、一つひとつが腑に落ちました。
誤解されがちな情報の解説もあり、ブッダの教えは実はとてもシンプルで、日々の生き方に活かせるものなのだと、前向きな気持ちにさせられました。

注目の文章ピックアップ

・ブッダの教えの中でも、重要視されている教えがあります。
「命懸けで母が子を守るように、無量の慈しみの心を起こしなさい」

・宗教の枠を超えて、民族の枠を超えて、国家の枠を超えて、世界中の人々が「無量の慈しみの心」を起こすと飢餓や環境問題が改善されていきます。
これこそ、ブッダの目指す「理想の世界」なのです。
理想の世界とは、別世界にではなく、この世に作るものなのです。

・理想の世界では、人種や国籍、家柄などは一切問われることがありません。
もし、問われることがあるとするのなら、人の「行い〈業〉」のみです。
なぜなら、人の生まれは平等で、人の行いにより違いが生まれるからです。

・「死」について、私たちは、普段、あまり深く考えることがありません。
しかし、大切な人を亡くしたときには、大いに考えさせられます。
そして、今、私たちは生きています。
ただし、絶対に、いつの日か、誰もが死ぬときを迎えるのです。

・「思い通りにならないこと〈苦しみ〉」も、「固定的な実態ではないこと〈空〉」なのです。
もし、今が苦しくても、いつしか苦しみはなくなります。

・私たちにできることは、いい死後の世界を求めることではなく、短い生涯の中で、「人を大切にする行い〈善行〉」をどれたけ積めるかなのです。

・どのように考えても、一度限りの「かけがえのない人生」なのです。
かけがえのない人生ということを理解すると、むなしく過ごすことが惜しくなります。

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