光の中のマインドフルネス 悲しみの存在しない場所へ
山下 良道(2018/1/1)

光の中のマインドフルネス 悲しみの存在しない場所へ

  • 著者:山下 良道
  • 出版:サンガ
  • 発行:2018年1月1日
  • 価格:1,600円+税
  • 頁数:299ページ
  • 評者:福村 倫子
  • 編集:スピりんく 編集部

スピリチュアルブログ版ダイジェスト

本日ご紹介するのは、鎌倉一法庵で住職をされている山下良道さんが、今話題の「マインドフルネス」の真髄を解説した一冊です。
著者が初めてマインドフルネスという言葉に出会ったのは、1980年代末のアメリカで、ベトナムの禅僧による著作を通してだったそうです。
それ以来30年間、著者は日本に例のないその教えに、ずっと違和感を抱き続けてきたといいます。

しかし、あるとき二人の師の教えにより著者は気づきます。
著者が発見したのは、

『実は我々はこの世界には存在していない』

という事実だったのです。
物事をあるがままに受け入れ、好き嫌いの判断もなく手放したとき、すべてが楽になるのはなぜか。
それは、私たちの本質が別の次元にあるからだというのです。

その衝撃的な考えを裏付けたのは、内山興正老師の著書に掲載されていた直筆のイラストだったそうです。
イラストは第一図から第六図まであり、その中の第四図から第五図に移る過程に大革命が起こっているとみられます。

私たちが生活しているこの世界が第四図。第五図ではこの世界が実は、ただの「映画」でしかないとされています。
しかも、大変な修行によって第四図から少しずつ第五図に移動するのではなく、そもそも第五図は違う次元にあるということのようです。

著者はこの「第四図と第五図」を、映画『マトリックス』や、「先発ピッチャーとリリーフピッチャー」、「現住所と本籍」などの言葉を使って様々な角度から解説していきます。

では、悩みや寂しさや焦燥感でいっぱいの苦しいこの世界──「第四図」から、真実の世界とされる「第五図」に移動するにはどうすればいいのか。
その方法は……
「私」は「第四図」にはいない、つまり、「ここにいないということに気づく」ということだそうです。

それはつまり、エゴがない場所に移動するということのようです。

小説家や音楽家などクリエイティブな活動をしている人たちは、この「エゴがない場所」をフロー体験で感じているといいます。
あれこれと一生懸命考えている時にはうまくできなくて、自分がなくなったときに自然と作品ができあがるというのです。

自己が消えたとき、それが、第五図の状態だということです。

しかし、著者はクリエイターたちのその自我がない状態というのを、感覚ではわかっているようだけれど、まだはっきりとした認識には至っていないとみています。
瞑想をすることで第五図の状態をもっと明らかにすることができると。
本書では瞑想の手順も紹介されています。

ですが、いざ瞑想を始めると、
「第五図なんて妄想」「瞑想なんてして意味ある?」「時間の無駄」
などと自分の声を借りたエゴが邪魔をするといいます。
そのエゴ=自己を完全に手放すことができると、やがて光が見えてくるそうです。

「光」は、この世界の本当の姿だとされています。

瞑想をすれば、大抵の人は失敗するそうですが、この失敗こそが重要だといいます。なぜなら、自分は「映画」の世界を生きていることに気づくことになるからだそうです。
その気づきを経て、瞑想に成功することで、第四図と第五図の二つの世界があることがわかるというのです。

では、第四図はニセモノで、第五図こそが事実であると知ったあと、私たちはどうやって日常を生きれば良いのでしょう。
それが、第六図が示す生き方だということです。

第四図のこの世界は、本当は存在していないのだから、何にも執着することなく無意味な世界をただ生きればいい。ゲームの世界と思って……
という考えも出るようですが、著者はそれでは何かが欠落していると感じていたそうです。どう生きるか、何が欠落しているのかを考え続けた著者はやがて気づいたそうです。

それは「世界への愛」だと。

著者は、仮想の世界に安らぎを求めて生きるか、それとも世界を愛して生きるか、どちらを選ぶかは、深いところで初めから決まっているのではないかといいます。
光に満ち溢れたこの世界で、愛をもってエネルギッシュに生きる。
これが「光の中のマインドフルネス」の真意だったのです。

目次

  • はじめに
  • プロローグ この世界には、本当にはいない私たち。ではどこにいるのか?
  • 第1章 第四図から第五図への道
  • 第2章 マインドフルネスはシンキング(思考)なのか?
  • 第3章 第四図と第五図のポジショニング
  • 第4章 アクセプタンスが効く理由
  • 第5章 人生に革命を起こそう
  • 第6章 先発ピッチャーが自爆するとき
  • 第7章 第五図ってクリエイティブ!
  • 第8章 あなたの瞑想がうまくいかないとしたら……
  • 第9章 ジャーナの真相
  • 第10章 光が見える
  • 第11章 世界を生きる最強のツールは慈悲
  • エピローグ 「世界への愛」が光の世界への入り口だから
  • おわりに

一言コメント

そもそも宗教に関心がない方、マインドフルネスという言葉を初めて聞いたという方や、瞑想初心者の方でも、たいへん読みやすい内容になっています。この世界は初めから「存在していない」という真実にただただ驚きでしたが、スピリチュアル本の初心者である私でも、スムーズに理解を深めることができました。

注目の文章ピックアップ

・マインドフルネスとは、今、自分に起こっていることなどを、好き嫌いや判断なしにそのまましっかりと認識すること、気づくことです。これがまず最初に言われる定義です。

・生死の問題がもはや存在しない第五図へ行くというのは、人生の大革命とでも呼ぶべきすごいことなのですが、それを、第四図の人の中にいるエゴがそう簡単に許すわけがないのです。

・エゴは実にいやらしく、しかも抜群に頭がよく、狡猾です。我々は、人に何か言われても関係ないと無視できますが、自分自身が思っていること、感じていることなら、聞く耳をもつでしょう。それがエゴの最強の手口です。

・死んだら終わり。死んだら何もない。ただ、この肉体が崩壊して、肉体の一部である脳も崩壊して、意識とか感情は脳が生み出すものだから、その脳が崩壊する以上、あとに残るのはただゼロ、虚無だけ。だから死ぬのは怖いし、意味がないものだし。もし、皆さんが第四図の存在だったらそうならざるを得ません。

・最初に結論を言ってしまうと、光というのは、実はこの世界の本当のリアルな姿です。

・まず、瞑想を失敗することによって、自分は映画の中を生きていたことを知る。

・その後、瞑想がうまくいくことによって、二重構造がはっきりわかる。

・第五図が見えたときに、実はこの世界はもう一回、無意味なものから、聖なるものへと戻るのです。

ネット書店で購入する

光の中のマインドフルネス 山下 良道

この記事を読んだ人は、こちらの記事も読んでいます

スピリチュアルブログ_本の書評_バナー

 

SSL GlobalSign Site Seal