小さな悟り:人生には「小さな答え」があればいい
- 著者:枡野 俊明
- 出版:三笠書房
- 発行:2018年6月22日
- 価格:630円+税
- 頁数:221ページ
- 評者:大島 敬一
スピリチュアルブログ版ダイジェスト
<<概要>>
人生、人間関係、仕事、老い、将来の5つの分野の合計99のテーマについて、どのように考えればいいか、どのように行動すればいいか、わかりやすく伝えてくれる本です。著者は海外にも名前が知られている禅宗の住職です。仏教や禅に特有な言葉を、現代人にわかりやすい言葉に言い換えて説明してくれます。すべてのテーマが見開き2ページで書かれていています。最初から順番に読まなくても、いま気になっている、悩んでいるテーマから読んでいくと、どんどん他のテーマに興味がつながっていき、しだいに全体の思想を理解できるようになっています。軽く読めるのに、深く納得できて、行動することが楽に思えて元気が出る本です。
<<人生のキーワードは「無常」>>
「無常」とは、世の中で起こることのすべては片時も留まっていないということです。私たちが「いま」していることは一瞬にして過去になります。著者は、過去は潔く忘れて、「いま」に集中して生きようと強調します。未来についても同じです。夢や目標はあくまでも方向を見定めるものです。足下から目をそらさず地道にやることがやがて大きな成果を生むのです。「いま」に集中することは、自分についても同じです。自分探しなどはやめて、いまここにある自分磨きをすることが大切です。
<<人間関係の基本は「無我」>>
「無我」とは実体がないこと、単体では存在しえず、関係性の中に存在しているという意味です。私たちは自分だけで生きているのではありません。たくさんの人・モノ・コトと関わることで生かされているのです。世の中はすべて「持ちつ持たれつ」です。著者は人に迷惑をかけないようにと考えすぎるのは禁物だと述べます。お世話になったらそのことを感謝し、自分も誰かのためにお世話をしようという気持ちを持つことが大事です。人間関係では、自分よりもまず人の利益を優先させる、「貸し」をつくることで、結果的に自分のためになります。
<<仕事は「ご縁」に従う>>
仕事の「ご縁」はタイミングでわかります。どんなに自分がやりたいことであっても、どんなに条件のいい仕事であっても、いま手一杯でやる余裕がなければ、その仕事とは「ご縁」がないのです。自分がいまやっている仕事は、すべて「ご縁」があって回ってきたものです。「ご縁」という視点で見れば、仕事は自分が「やる」のではなく、「やらせていただく」ものなのです。このような気持ちで仕事に取り組んでいれば、次の仕事の「ご縁」につながるでしょう。
<<将来の不安を消す>>
不安は「起こっていないことに」に対して、自分の心が勝手に作り出したものに過ぎない、と著者は強調します。「いま」起こっていることだけを考えれば、余計な不安は消えていきます。「先のことは先のこと。そのときに考えればいい」くらいの気持ちでいるのがちょうどいいのです。「本来無一物」とは、なくすと困るものは何もないという禅の教えです。この“小さな悟り”が人を強くするのです。
<<まとめ>>
人生、人間関係、仕事で、多くの人が悩むポイントに対して、「無常」と「無我」の概念をもとに、わかりやすい解決策を教えてくれます。解決策は具体的な行動として書かれています。「小さな悟り」とは、考えすぎずにまずは行動してみようというメッセージです。困ったとき、悩んだとき、迷ったとき、ページをめくれば、シンプルに行動するためのヒントと勇気がもらえるでしょう。
目次
- はじめに
- 1章 人生に迷ったら-「無常」を生きるキーワードにする
- 2章 人間関係に悩んだら-禅的に「関わり方」を変えてみる
- 3章 仕事で困ったら-「ご縁」に従うと、すべてが好転する
- 4章 老いを感じたら-変化に逆らわない、変化を受け入れる
- 5章 将来が不安なら-「いま」できることだけに、集中する
一言コメント
本書を読んで、「悟り」って実は簡単なことなんだと知ることができました。頭で考えることはやめて、まずは行動してみることが大事です。私は、「無常」という言葉をいつも思い出すことで、「いま」に集中することができるようになりました。「いま」できることに集中することで不安を感じることが少なくなりました。
注目の文章ピックアップ
・お茶を飲むときはお茶を飲むことだけに、食事をするときは食事だけに意識を集中させたいものです。
・“ないものねだり”より“あるもの磨き”の精神でいくことが大切です。
・そろそろ「つながらない」ことの安らぎに目覚めてはいかがでしょうか。
・「周りのみんなのおかげでいい仕事ができる」と感謝すればこそ、協力者がいっそう増え、自然と自分の成績も上がっていく。
・お金はもともとは社会からお預かりしたものですから、社会に還元するのがスジでしょう。
・なぜなら実績の良い・悪いなど、すぐに“過去の藻屑”になって、いつかは消えてなくなるものだからです。
・先のことをいま心配してもしょうがないので、「先のことは先のこと。そのときに考えればいい」くらいの気持ちでいるのがちょうどいいかと思います。
・たいていのことはなんとかなるし、なんとかならないものは、どんなに努力してもなんともならないのです。
・ちょっと庭に出て深呼吸をしたり、近所を散歩したりして,昨日とは違う景色を眺めて「幸せだなぁ」と思う。