数えないで生きる
岸見 一郎(2021/2/11)

表紙イメージ_スピリチュアルブログ

 

数えないで生きる

  • 著者:岸見一郎
  • 出版:扶桑社
  • 発行:2021年2月11日
  • 価格:1,400円+税
  • 頁数:246ページ
  • 評者;宮村 凌

スピリチュアルブログ版ダイジェスト

本書は、教育学部や看護学部の講師を歴任するとともに、専門の哲学者に並行してアドラー心理学を研究し、「嫌われる勇気」などを手掛けた岸見一郎氏が、自身の経験をアドラー心理学などに照らし合わせて「数えないで生きる」ことや「今」の幸せを感じることの大切さを教えてくれます。

<<「恐怖」と「不安」の感情は違う>>
生きていく上で、だれもが恐怖や不安を持つものです。それは明日へ対するものやお金に関すること、死に対するもの。その人の現状によって異なります。しかし、恐怖と不安には決定的に違うことがあります。それは、「その対象がはっきりしているか否か」です。つまり、恐怖と不安は対処方法が違うということなのです。
恐怖はその対象がはっきりしています。例えば、自動車が猛スピードであなたに迫ってくると恐怖を感じます。それは、自動車が自分に衝突するという恐怖を感じるからです。ですので、このような恐怖を取り除くには、「自動車」から逃げ出せばよいでしょう。
一方、不安にはその対象がありません。はっきりした対象がないため、目の前にあるものから逃げるだけでなく、あらゆるものから逃げてしまいます。そして、さまざまなことが「できなくなる」のです。例えば、試験を受ける前日です。不安なので試験勉強をする気にならず、「明日の試験はどうなるのだろう」という抽象的な不安が広がります。しかし、不安だから試験勉強が手につかないのではなく、試験勉強をしないために不安になっているのです。決して、課題(試験)が困難であるからではなく、課題に直面しないでおこうという決心があり、その決心を後押しするのが不安なのです。不安を解消することは簡単です。明日の試験が不安なのであれば勉強すればいいのです。課題があるならば、それを乗り越える準備をすればよいだけなのです。

<<時間を止めたいと思うこと>>
明日の試験が不安だと、勉強時間が足りないから時間が止まればいいのにと考えることもあるでしょう。しかし、本当に時間が止まったらいつまでも勉強をしなければなりません。これは、未来に不安を感じているときに思う「時間を止めたい」という願望です。一方、幸せな時間を過ごしているときに、幸せすぎるとその後に不幸が訪れるのではないかという不安から「時間を止めたい」と思う人もいます。双方は、状況は違えどどちらも未来に不安を抱えるばかりで、今を生きているとは言えません。特に後者は、「今」が幸せなのに、その幸せを噛みしめることなく、わざわざ未来の不安と過ごしてしまっています。いつ終わりが来るのだろう、幸せが終わって不幸がくるのはいつだろうと、時を数えて生きているのです。

<<「今」生きがいを感じるために>>
大切なことは、何かが来ること、変化することを考えて「今」不安を感じて生きるのではなく、「今」生きがいを感じて生きることです。しかし、未来に希望が持てなければ生きがいを感じることは難しいかもしれません。ではどうすれば「今」生きがいを感じられるのか。それは、今の幸福と未来の希望を結び付けないことです。もし、現在の幸福と未来の希望を選ぶとするならば、「現在の幸福」を選ぶことです。こうすることで、日常にふと感じる幸福が生きがいにもなります。無理に希望を未来に結び付ける必要はありません。「今」が幸福であること自体が「希望」なのです。

目次

  • 大事なことは何か~はじめに
  • 第一章 他者を理解できないのと同じく、人生のこともすべてわかっているわけではない
  • 第二章 本当に大事なことを考えるためにはじっくり問題と向き合い、考え抜かなければならない
  • 第三章 過去のつらかった経験をなかったことにはできないが、「今」が変われば過去は変わる
  • 人はどこからきてどこへ行くのか~終わりに

一言コメント

明日起こることが不安で、今すべき準備が手に付かない。しかしこの不安は、これは準備をしたくないという気持ちを後押しするために生まれているものです。そして、この不安が希望を奪い、「今」に生きがいが感じられなくなっています。未来の希望を求めるよりも「今」の幸福を選択することが如何に大切かを学べる一冊です。

注目の文章ピックアップ

・人の気持ちがわかると思った時、大抵、誤解しているといっていいくらいだ。

・他者のために何かをする努力ではなく、他者を理解しようとする努力という意味である。

・恐怖という感情はこのように対象がはっきりしている。恐れの対象がなくなれば、恐れも消える

・他方、不安にはこれといった対象はない。対象がないことはいよいよ人を不安にさせる。

・なぜ、不安には対象がないのか。必要ないからである。

・恐怖を感じることには目的がある。危険から逃げるためである。

・不安も基本的には同じである。しかし、その対象ははっきりとはしない。そのため、目の前にあるものから逃げるだけでなく、多くのことから逃げる。

・課題を前にして不安になるのは、必ずしも課題自体が困難であるからではない。

・今の人生に向き合う姿勢を変えることで過去が変わったり、それまで忘れていたことを思い出すこともある。

・先に不幸な出来事が起こりそうなので今楽しめないのではなく、今、心から楽しまないために先のことを考えて不安になるというのが本当である。

・人が失うことを恐れているのは、幸福ではなく幸運である。

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数えないで生きる 岸見一郎

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