達観するヒント
- 著者:名取 芳彦
- 出版:三笠書房
- 発行:2024年1月25日
- 価格:1650円+税
- 頁数:208ページ
- 評者:萩森 千秋
- 編集:スピりんく 編集部
スピリチュアルブログ版ダイジェスト
<<「無常の法則」を心得る>>
人生は「苦」の連続です。焦ったり、落ち込んだり、イライラしたり……。そんなときは「人生は無常である」ということを思いだせば、すべてがうまくいきます。「変わらないものなど、何一つない」というものが、この世の真理となるのです。
たとえば人間関係。「無常の法則」を心得ている人は、どんな関係も「いつかは終わる」ということを知っているので、悪い関係については悩まず、いい関係には、一期一会の精神で目の前の人を大切にすることができるでしょう。いい意味で、ドライで気持ちのいい人間関係を築くことができるのです。
この本では、「無常」という仏教の知恵を土台に、心おだやかに生きていくためのヒントがたくさん記されています。
<<生きるためのヒントがたくさん>>
この本の中では、時々刺激的な見出しがはさまれています。「みんな自分勝手だと思って間違いない」など。
人には、三つのやり方があるそうです。正しいやり方、間違ったやり方、そして自分のやり方です。正しいやり方と間違ったやり方は、あとになって結果が出ます。やる前も、やった時点でも、正しいか、間違っているかは判断できません。
結局、あなたも私も、人はみんな、自分のやり方しかしていないのだそうです。その意味で、人はみんな自分勝手です。こういうヒントを読めば、他人のやり方にイライラしていることがばからしくなるでしょう。
また「あの人はとっくに、あなたのことを忘れています」という言葉もあります。
さまざまな出会いの中には、印象に残っている人がいるものです。しかし過去の出来事に執着していては、現在や未来の選択肢が限定されます。
あなたが昔出会ったあの人は、とっくにあなたのことを忘れている……そう言われると、ガッカリするかもしれません。しかし、関係が続いている人との縁を大切にしたほうが、心が自由になるでしょう。
<<さまざまな縁が集まった結果、どうなる?>>
私たちはこの縁起と無常の法則の中で、自分の都合や願いを実現しようとします。自分の願いを叶えるという結果を導き出すためには、さまざまな縁の中で、自分で集められる縁をできるだけ多く集めて待つしかありません。
これらの縁を大別すると、「時」と「人」に分類できます。時と人がそろった結果、うまくいくのです。そこに感謝とおかげを感じるといいでしょう。また、現在うまくいってないことがあっても「まだ、時と人がそろっていないのだ」と考えれば折り合いがつきます。
また縁は「チャンス」と言い換えることもできます。我々は、毎日無数のチャンスに触れているわけです。だからといって、縁に執着する必要はありません。次々に集まる縁によって、結果も変化するので、同じ状態を保てません。そこが無常の法則というわけです。
こういう高い視点からの洞察を得られると、毎日リラックスして生きられるようになるでしょう。この本では「縁」の具体的な捉え方と、それによって生まれる「無常」がよくわかるようになっています。
目次
- 1章 人生に迷ったら
- 2章 人間関係に悩んだら
- 3章 仕事で困ったら
- 4章 生活が不安なら
- 5章 老いを感じたら
一言コメント
本書のテーマは「諸行無常」です。元結不動密蔵院住職名取芳彦さんが、日々の生活の上で、心を乱されないように生きる方法を教えてくれます。無常を受け入れ、変化をポジティブなものとしてとらえると、「達観」した生き方ができるようになります。精神的に疲れた方が、パラパラとめくると思いがけないヒントを得られます!
注目の文章ピックアップ
・本書のテーマは、この世のすべてのものは同じ状態を保たないという諸行無常です。これは、すべての物事をさまざまな縁が集まった結果とする“縁起の法則”が土台になっています。次々に集まる縁によって結果も変化するので、同じ状態を保てません。
・私たちはこの縁起と無常の法則の中で、自分の都合や願いを実現しようとします。自分の都合通りにして願いを叶えるという結果を導き出すためには、さまざまな縁の中で、自分で集められる縁をできるだけ多く集めて待つしかありません。
・しかし、人は裏切ります。それも意外と簡単に。相手には裏切った意識がないこともあれば、仕方なく裏切る場合もあります。相手の事情が変化したのですから仕方ありません。信頼に応えるのは大切ですが、人は裏切る――私はそう覚悟しています。
・一つの出来事は、多くの縁が集まった結果です。望む結果があるなら、そのための縁を集めなければなりません。しかし、すべての縁を自分で集めるのは不可能です。大切なのは、自分の力で可能な限り縁を集めること。
・物事は縁が集まった結果です。縁の中には、個人の力が及ばない社会や経済状況などの他に、自己投資をしておく、人脈を作っておく、実力をつけておくなど自分で引き寄せられるものもあります。
・身の回りで起きることの中には原因や縁を予測できるものもありますが、それが皆目わからないこともあります。