あなたの「生きたい」を支えます
玉置妙憂(2023/5/30)

あなたの「生きたい」を支えます

  • 著者:玉置 妙憂
  • 出版:佼成出版社
  • 発行:2023年5月30日
  • 価格:1,400円+税
  • 頁数:196ページ
  • 評者:宮村 凌
  • 編集:スピりんく 編集部

スピリチュアルブログ版ダイジェスト

本書は、看護師僧侶の玉置妙憂氏が、看護師の経験と僧侶の視点から、スピリチュアルペインやスピリチュアルケアを通して生死を説く一冊です。玉置妙憂氏は、看護師を経て高野山真言宗で修業を積み僧侶となり、現在は緩和ケア病棟、精神科デイケアにてスピリチュアルケア担当として活躍するかたわら、非営利一般社団法人大慈学苑代表としてスピリチュアルケア活動を続けています。

<<健康に必要な「スピリチュアル」の概念>>
「スピリチュアル」という言葉の響きには「怪しい」「霊感商法」などといった負のイメージを持たれる一面もあります。
しかし、「スピリチュアルペイン」や「スピリチュアルケア」という概念が一九九〇年代後半、世界的に大きく取上げられるようになりました。
健康の定義が「肉体的なもの、精神的なもの、社会的なもののすべてが満たされた状態にあること」と提案されたためです。この提案により、「スピリチュアルペイン」「スピリチュアルケア」「スピリチュアルヘルス」という考え方が医療看護の教育現場にも入ってきました。

<<スピリチュアルペインとは>>
私たちは例外なく、胸の奥底にスピリチュアルの箱を持って生まれてきています。この箱がスピリチュアルペインです。普段この箱は、潜在意識の底にしまわれているため、見ることはありません。しかし、この蓋が開いてしまうことがあるのです。それは次の3つのタイミングです。

  1. 自分の命の限りを認識したとき:がん宣告されたときなど
  2. 大切な人の命の限りを認識したとき:親や伴侶や子供、友人の命が尽きるとわかったとき
  3. 多数の生命が奪われる不条理を認識したとき:近年でいえば、多数の命が奪われた「コロナ禍」

このとき、普段見ることのない箱の蓋が開いて、スピリチュアルペインが吹き出すのです。そして、スピリチュアルペインには2つの特徴があります。

  1. スピリチュアルペインに対する答えはない
  2. スピリチュアルペインを聴いた人もダメージを受ける

スピリチュアルペインには答えがないため、本人はもちろん、それに関わる人にもダメージを与えます。

<<スピリチュアルケアとは>>
答えがなく、本人と周りにもダメージを与えるスピリチュアルケインを治療することは困難です。「答えがない」からです。スピリチュアルケアでは「物語の書き換えのお手伝い」をします。私たちは、日々の暮らしの中で起こる事実を確認したとき、瞬時に物語をつくり、物語として出来事を蓄積していきます。たとえば、自分にとってつらい物語をつくってしまい、それにとらわれてしまった方には、その物語の書き換えを手伝います。物語を書き換えるための最も有効な方法は「語る」ことです。何度も何度も繰り返して話をするうちに、物語は少しずつ変化していきます。「話す」ことで、抱えているつらい物語を「放す」のです。そして、語られる物語をひたすら「聴く」ことで、物語の書き換えのお手伝いをするのがスピリチュアルケアなのです。

目次

  • はじめに
  • 1章 なぜ仏教だったのか? 私が看護師僧侶になった理由
  • 2章 スピリチュアルケアと仏教
  • 3章 スピリチュアケアの現場から1 ―――死にゆく人、家族に寄り添う
  • 4章 スピリチュアルの現場から2 ―――生きづらさを抱える人に寄り添う
  • 5章 仏教だからできること ―――台湾の取り組みとその可能性
  • 6章 生死とどう向き合うか
  • おわりに

一言コメント

スピリチュアルペインとスピリチュアルケアの意味を理解することで、生死について俯瞰できるような気がします。ご自身が置かれている立場によって解釈が変わるかもしれません。しかし本書を読むことで、恐さや辛さが少しでも和らぐのではないでしょうか。誰にでも必ず訪れる死に寄り添うために、一読しておきたい一冊です。

注目の文章ピックアップ

・瞑想は、その意識の外側に向かったアンテナをしまって、自分の内面を見つめる時間をつくることです。

・自分自身に全集中して、自分は何を感じているのか、何を考えているのか、体のどこかに痛みや違和感はないかと、自分をくまなくスキャンしてみる。

・ひとつの命が消えていくというおお仕事は、悲しくて、泥臭くて、けれど人の心をぐっとつかむ―――それが、死のリアルです。

・私たちは、胸の奥底にスピリチュアルの小さな箱を持って生まれてきています。

・ひとつは、「自分の命の限りを認識したとき」です。

・ふたつは、「大切な人の命の限りを認識したとき」です。

・三つは、「多数の生命が奪われる不条理を認識したとき」です。

・ですから、本当は、その土地で生まれたスピリチュアルペインは、その土地でケアされるのが一番よいのです。

・自分でつくった物語が、自分にとって非常に苦しいものだったとき、人はスピリチュアルペインを抱えるのだと考えています。

・私が最も有効だと感じているのは、「語る」ということです。

・スピリチュアルケアを成立させようとするときには、話を聴くもの、つまり、スピリチュアルケアギバー自身が、いかに安定し続けているかが最も重要です。

・人は、くり返し語ることで物語を書き換えていきます。

・ほかに活路があるのにもかかわらず、あえてそっちを見ずに、こうしなければだめということにとらわれて、苦しんでいるようなきがするのです。

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あなたの「生きたい」を支えます 玉置妙憂 佼成出版社

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