嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え
- 著者:岸見一郎 古賀史健
- 出版:ダイヤモンド社
- 発行:2013年12月12日
- 価格:1,500円+税
- 頁数:294ページ
- 評者:宮村 凌
スピリチュアルブログ版ダイジェスト
本書は、哲学者の岸見一郎氏と株式会社バトンズ代表でありライターの古賀史健氏が、アドラー心理学をわかりやすく伝えてくれます。対話形式で読みやすく、そして物語としても楽しみながらアドラー心理学が理解できる一冊です。物語は、悩み多き青年がある哲学者の元を訪ね、「人は今日からでも幸せになれる」と説く真意を問いただすところからはじまります。
<<勇気の心理学>>
アドラー心理学では、過去の「原因」ではなく、いまの「目的」を考えます。例えば、家に引きこもっている人がいるとすれば、それは「不安だから外に出られない」のではなく、「外に出たくないから、不安という感情をつくりだしている」と考えるのです。原因を作ることで「外に出ない」という目的を達成させているといえます。つまり、今あなたが不幸だと感じているということは、「不幸であることを」自らが選んだ結果です。そんなはずはないと感じるかもしれませんが、「このままのわたし」でいるほうが、変化するよりも楽で安心だから「変わらない」ことを決心して、それを実現させています。
私たちが日常を変化させるとき、そこには大きな“勇気”を必要とします。あなたが幸せを感じられないのは過去や環境のせいではありません。「幸せになる勇気」が足りていないのです。つまり、「いま、ここ」で変化する勇気を持てば、幸せになるという目的はいつでも実現させられるということです。
<<悩みはすべて対人関係>>
すべての悩みは対人関係につながります。例えば、家に引きこもっているのも、紐解いていけば、外に出て誰かとの競争がはじまり比較されることで、あなたが劣等感を感じてしまうことを避けようとしているからです。つまり、“外の誰か”と自分を比較する、あるいは比較されることから逃げる目的を「引きこもる」という方法で達成しているといえます。もし、この世にあなた一人しか存在しなければ、他人と比較されることもありませんし、そこに不安や怖れはないでしょう。このように、すべての悩みは対人関係であり、個人だけで完結する悩みなどは存在しないのです。
<<課題の分離>>
それでは、どうやって対人関係の悩みを解消すればよいのでしょうか。その方法は「課題の分離」です。例えば外に出て、接する人に嫌われたくないから引きこもっているという人が考えるべきは、人が自分を嫌うという課題と、自分が引きこもりたいのかどうかという課題を分けることです。まず、他者が自分を嫌うかどうかは他人の課題であり、自分ではどうしようもないことです。しかし、引きこもるかどうかという課題は、自分が外に出たいと思えばいつでも叶えられる目的なのです。あなたにできることは「自分の信じる最善の道を選ぶこと」であり、他人がどう思うかを思い悩むことではありません。
課題を分離して考えるためには、「これは誰の課題なのか」を考えましょう。そして、他者の課題には介入しない。自分の課題には誰ひとりとして介入させないと意識することで、対人関係の悩みを一変させることができるのです。
目次
- 第一夜 トラウマを否定せよ
- 第二夜 すべての悩みは対人関係
- 第三夜 他者の課題を切り捨てる
- 第四夜 世界の中心はどこにあるのか
- 第五夜 「いま、ここ」を真剣に生きる
一言コメント
過去の「原因」ではなく、いまの「目的」を考えることで「なぜいまこの悩みがあるのか」がわかってきます。そして、すべての悩みが対人関係に起因していること、課題が分離できることを知るだけでも気持ちに変化が訪れます。本書は、アドラー心理学を通して私たちの悩みを解決へ導いてくれる一冊です。
注目の文章ピックアップ
・ご友人は「不安だから、外に出られない」のではありません。順番は逆で「外に出たくないから、不安という感情をつくり出している」と考えるのです。
・アドラー心理学は勇気の心理学です。
・何度でもくり返しましょう。「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」。
・個人だけで完結する悩み、いわゆる内面の悩みなどというものは存在しません。
・しかし、自らの不幸を「特別」であるための武器として使っているかぎり、その人は永遠に不幸を必要とすることになります。
・われわれは「これは誰の課題なのか?」という視点から、自分の課題と他者の課題とを分離していく必要があるのです。
・「その選択によってもたらされる結末を最終的に引き受けるのは誰か?」を考えてください。
・その選択について他者がどのような評価を下すのか。これは他者の課題であって、あなたにはどうにもできない話です。
・「自由とは、他者から嫌われることである」
・幸せになる勇気には、「嫌われる勇気」も含まれます。
・「人は、自分には価値があると思えたときにだけ、勇気を持てる」
・われわれにはなにかの能力が足りてないのではありません。ただ“勇気”が足りていない。すべては“勇気”の問題なのです。
・すなわち「幸福とは、貢献感である」。それが幸福の定義です。
・過去も未来も存在しないのですから、いまの話をしましょう。決めるのは、昨日でも明日でもありません。「いま、ここ」です。