ひとりの「さみしさ」とうまくやる本 孤独をたのしむ。
- 著者:大愚 元勝
- 出版:興陽館
- 発行:2021年5月15日
- 価格:1,100円+税
- 頁数:201ページ
スピリチュアルブログ版ダイジェスト
「さみしい」という孤独感は、人間であれば、誰しもが抱える感情です。なぜなら、孤独はすべての人間が持っている、目に見えない本能だからです。
つまり、孤独を感じているのは、自分1人ではありません。
テレワーク、大人数での会食の自粛、人との物理的距離をとることなどが推奨されている昨今、ひとりでいることに不安を感じる人は増えています。
孤独が人間の本能である以上、避けては通れず、うまくつき合っていくほかないのです。
本書では、シチュエーション別に、さみしさに対処していくための、ありがたいヒントが書かれています。
《著者「大愚元勝(たいぐげんしょう)」氏について》
本書の著者である大愚元勝(たいぐげんしょう)氏は、佛心宗大叢山福厳寺の31代住職を務める傍ら、事業家や作家などとしても活動しています。
また、セラピストや空手家などの顔も持ち、ジャンルにとらわれずに活躍の場を広げています。
講演、執筆、WEB上での情報配信などを通じて、仏教に学ぶ生き方を伝え続けており、特に、大手動画配信サービスの人生相談が人気です。
大愚氏が独自の視点で語る内容はわかりやすいと好評で、本書に登場する仏教用語についても、難しい言葉を使わず、丁寧に説明を加えています。
《「さみしい」という孤独は、誰もが本能的に抱く感情である》
家族や友人、大勢の人たちと一緒に過ごしているのに、なぜか孤独を感じてしまうのは珍しいことではありません。
また、親しい友人がいないから、心が弱いから、特別に孤独を感じるわけでもないのです。
どんな環境や状況にあっても、人間である限り、誰もが孤独を感じます。それは、孤独が誰もが備えている、目に見えない本能であるからだと著者はいいます。
それでは、さみしさの原因とは何なのでしょうか。
孤独の原因は人それぞれですが、外的要因ではなく、自分の心の問題に起因するケースが多いと著者は主張しています。
まず、孤独は自分の心の問題であると気づくことが、孤独と向き合う第1歩なのです。
《孤独と向き合い、うまくつき合っていく》
「孤独」とひと口にいっても、老いからくるさみしさ、友人がいないさみしさ、愛する人を失ったさみしさなど、さまざまなシチュエーションがあります。
それらの孤独が苦しみなのだとしたら、お釈迦さまの教えである「八正道(はっしょうどう)」を実践することで、解決の一助となるかもしれません。
しかし、孤独という本能的な感情を完全に消し去ることは困難でしょう。
孤独感を手放せないのだとしたら、うまくつき合っていくほかありません。そのためには、徹底的に孤独と向き合うことが大切だと筆者は述べています。
なぜ孤独を感じるのか、孤独に打ち勝つ強さを身につけるには何をすべきなのか、さまざまなことを自問自答し、突き詰めていくことで、なすべきことが自ずと見えてくるのです。
つまり、孤独と向き合うことは、自分の内面や人生そのものと向き合うことにつながります。
本書を読むと、「孤独な時間は人を成長させるありがたい時間」という著者の主張がよく理解できます。
目次
- はじめに
- 第1章 なぜさみしいの?
- 第2章 老いのさみしさとうまくやる
- 第3章 おひとり様のさみしさとうまくやる
- 第4章 集団の中でさみしさを感じたとき
- 第5章 友達がいないさみしさについて
- 第6章 家族の中でのさみしさについて
- 第7章 愛する人との死別のさみしさを乗りこえるには
- おわりに
一言コメント
孤独からくる「さみしさ」は人間に与えられた本能であり、誰もが例外なく持っている感情の1つです。孤独やさみしさは人を不安にしますが、同時に、私たちを成長させてくれる、ありがたい時間であると筆者は述べています。本書を読むことで、孤独としっかり向き合う勇気をもらえます。
注目の文章ピックアップ
・徹底的に孤独と向き合えば、自分の弱さやずるさが浮き彫りになってきます。あなたが改善すべきことが見えてきます。
・利他心を選んで生きている人が孤独になることは絶対にありません。
・問題は死ぬ前。つまり意識があるうちに、きちんと生きることが大切なのです。
・人間のあらゆる苦悩や心の葛藤が消え、穏やかな心持ちになることを仏教では「涅槃」と言いますが、涅槃に至るための準備を整えながら過ごすことが真の就活なのです。
・大きければいいというものではなく、大切なのは自分の器にふさわしい人生について熟考することであり、今の幸せに感謝しながら精一杯に生きることです。
・つまり孤独のさみしさから逃れるためには、人生の目的を掲げ、それに向かって精神性を高めていく必要があるのです。
・孤独は人を成長させてくれます。
・仏教ではお互いを高め合うことのできる「勝友」(優れた友)を持つよう教えていますが、優しく、常識的で、知恵と勇気にあふれた勝友にふさわしい自分になるためには、孤独の中で自分を磨く必要があります。
・この世は捨てたものではありません。自分の不幸を運命のせいにしてはいけないと気づいた人から幸せになることができるのです。
・死について考えることは、どう生きるのかを考えることなのです。そのことを理解すれば、「孤独な時間」は自分の人生を豊かにするために与えられた「ありがたい時間」なのだと受け止めることができるでしょう。