祈り方が9割 願いが叶う神社参り入門
- 著者:北川 達也
- 出版:コボル
- 発行:2018年12月1日
- 価格:1,500円+税
- 頁数:288ページ
- 評者:飯野 崇
スピリチュアルブログ版ダイジェスト
「スピ系」という言葉をご存知でしょうか?
スピ系とは、スピリチュアル系の略で、感覚的で、普遍性に欠け、現実に根ざしていない信仰形態の人のことを言うような意味合いで使われています。
スピリチュアルは、30~40代の女性を中心に、幅広く受け入れられて、精神的な支えになっているといわれています。
その証拠に、最近の大きな書店に行くと、スピリチュアルの書棚コーナーがあるほどです。
しかし、スピリチュアルの考え方の中には、精神的な支えになっているという反面、神社のご神木に抱きつくことをおすすめしている書籍もあります。
そのような間違った認識から、実際に、多くの問題が発生しているとのことです。
一例として、本書にのっている文章を抜粋します。
『神社の参道に立っている木に抱きついたり、木に触れたりする参拝者がいます。
この行為によって、木の皮がむけてしまってツルツルになり、最終的には、実際に、木が枯れてしまうことが起こっています。
木が枯れてしまうことに困った神社は、そのような参拝者から木をガードするために、木の幹に竹を割って巻くようになりました。
これは、木を保護するための苦肉の策です。
このようなことから、「神社の木に抱きついたり、触れたりする行為はNG」とお伝えしておきます。』
このような「スピ系」に対抗して「伝統的な神社参り」への回帰を訴えている書籍が、本日ご紹介する『祈り方が9割 願いが叶う神社参り入門』という書籍です。
著者は、神職資格を持つ、ソフトウェア開発の会社経営者です。
特色ある経歴を生かして、客観性をもった語り口で、優しく、丁寧に、平易な言い回しで、伝統的な神社参りを指南してくれます。
しっかりとした類書を読むと、堅苦しく、学術的なものが多く、私たちには難しく、歯がたちません。逆に、一般向けの簡単な類書を読むと、ファンタジーが多く、現実にはあまり役に立たないことが多いように思います。
あえて、本書に近い類書をあげると、斎藤一人氏、小林正観氏の自己啓発のビジネス書に近いような印象があります。
本書は、「願いが叶う」という切り口によって、日本古来の伝統的な神道や神社を説明しているように思います。
そして、「どのように祈ると願いが叶うのか?」という内容を著者の体験談ではなく、日本古来の伝統的な神道にもとづいて書かれています。この点に関して、私の知る限り、類書が見当たりません。
内容のポイントは、「願いを叶える」ためには、「自分のことよりも、みんなのことを願う」ということにあるように思います。
本書を読むと、日本古来の伝統の素晴らしさに気づかされることになります。
例えば、いい神社の見分け方、神社参りに相応しい服装、鳥居・手水・参道などの意味、ご祈祷の受け方や流れ、神社参りの作法、祀りの真意などが細やかに示されていることです。
ここで本書の概要をお伝えします。
「願いを叶える神社参り40 の法則」ということで、40もの項から構成されています。
まず、「神社参りの入門」として、「神社境内の知識を身につけること」や「適切な服装を準備すること」から説明されています。
そして、「神社参りの基礎」として、「鳥居のくぐり方」、「手水舎の手水の取り方」、「参道の歩き方」、「賽銭箱の前での心得」、「拝殿の中でのご祈祷の申し込み方法や作法」などを順番に説明されています。
さらに、「神社参りの応用」として、「願いを叶えるために必要となる神話」や「神社の背景に流れる思想」、「神社の起源」なども説明されています。
最終的には、「神社参りの実践」として、「祈り」をマスターするところまで話が進んでいます。
ここを読むと、「祈り方が9割」の真意が腑に落ちるといいます。
著者の主張として、目を引いたところは、「祈りの内容によって、私たちのメンタルはつくられる」ということです。そのため、「みんなのことを思う祈り」をささげていくことによって、私たちの心の成長する方向性も明確に定まっていくといいます。そして、祈りを継続していくうちに、心の中も「みんなのことを思いやる愛情」へと変わっていくということになるといいます。
願いを叶えるために、自分のためではなく、他人のために祈ることは遠回りに思えてしまいます。
しかし、本書の読んだ感想として、結果的に、遠回りではなく、他人のために祈ることが願いを叶えるための一番の近道になると私の考え方が改まりました。
これからの日本人は、自分のことだけを祈る時代から、他人のことを祈る時代に差し掛かっているのではないのかと思います。
より良い社会や家庭、強い自分自身を求めている人、願いを叶えたい人におすすめの一冊です。
目次
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- 願いを叶えるための「十の扉」
- 序章
- 第一の扉 神社参りの入門 知識 編
- 第二の扉 神社参りの入門 服装 編
- 第三の扉 神社参りの基礎 参道 編
- 第四の扉 神社参りの基礎 賽銭 編
- 第五の扉 神社参りの基礎 祈祷 編
- 第六の扉 神社参りの応用 神話 編
- 第七の扉 神社参りの応用 神道 編
- 第八の扉 神社参りの応用 歴史 編
- 第九の扉 神社参りの実践 感謝 編
- 第十の扉 神社参りの実践 愛情 編
- 結び
一言コメント
願いを叶えるために、特別なセミナーに通う方、各地の神社・パワースポットに通う方、多くの願いを叶える系統の書籍を読む方がいると思います。本書では、願いを叶えたいけど叶えられない方に向け、神道神学からみた「願いの叶え方」を纏めています。
注目の文章ピックアップ
・会社経営の願いを叶えるためには、「経営の総合力」が必要です。
例えば、経営スキルとして、販売管理、財務管理、労務管理などをバランスよく学んだ上に、企業戦略やマーケティング、マネージメント、コピーライティング、ウェブ対策などの具体的なノウハウの習得も必要です。
・ただし、一つだけ、絶対にいえることがあります。
それは、「経営の総合力」より、「愛情の祈り」のほうが重要ということです。
・私は、言葉の違いこそあれ、神社参りで願いが叶う人の共通点も「愛情の祈り」にあると思っています。
・「祈り」とは、決して「心の思いを申し上げること」ではなく、「心身を清浄に保って申し上げること」をいうのです。
・そして私は、「祈り」の時間配分を「感謝2割、愛情8割」としています。
・そして、「愛情の祈り」をささげてメンタルがつくられていくと、私たちの心の成長する方向性も明確に定まっていきます。
・実は、歴史的に見ても、神社の構造的に見ても、立地的に見ても、神職の祀りの時間の長さから見ても、神社の中で圧倒的にパワーがみなぎっている場所は最も神聖な「本殿」といえるのです。